監督キャリア2度目の名君正祖。「おとぎ話
のように描きたかった」との言葉通り、粋な設定
が随所に。第33話あたりから祖父英祖の認知症
を巡る駆け引きも登場。実に深い人間ドラマ。
「覚えていますか切ないあの出来事を~♪」の劇中歌は耳に残りますね。
実はイビョンフンは1986年から5年間、朝鮮王朝500年シリーズの監督を務め、李氏朝鮮の王27人を全て描いた経験があります。だからこそ、「薯童謡」で新しい王の描き方を試みたのでしょうし、このイ・サンも「おとぎ話のように描きたかった」とコメントしています。
李氏朝鮮時代(1392~1910)はそれまで仏教国だった半島に儒教支配を徹底した時代でした。
儒教については別にブログで述べるつもりです。この時期は厳しい身分制度まっさかり、文化的自由もかなり制限されているとき。しかしこのドラマは、それが時の為政者次第であり、それに抗った良心的な人物もいたことを感じさせます。狭い考えにとらわれない、歴史的に良い為政者の代表だった正祖イ・サン。この時代に朝鮮では、文化のルネッサンスが花開く。
キーパーソンである祖父英祖について、以下の事を知っておくと、イ・スンジェの名演をより深く感じて頂けるかも。英祖は、前の王妃亡き後、51歳年下の貞純王后を王妃に迎えています。その是非はともかく、母親はあのトンイ(同伊)こと淑嬪崔氏で、宮中の女性中最下級の井戸水くみムスリ出身、とても苦労した母親。そんな背景から、英祖を蔑視する者も多かった。とても民衆思いなのは、そのあたりから来るのでしょうか。均役法を実施したり実学を奨励したりと、官僚の利権社会真っ只中にあって革新的な善政を敷いた、まさにこの英祖あっての孫、正祖(イ・サン)という気がします。
そしてイ・サンの母に扮したキョンミリさん。劇中、親心から一度だけ間違いをしますが、その時の憂いに満ちた様子!歴史に残る悪役チェサングンもそうでした。善悪どちらを演じようとも、その人物の奥底の深い部分をたたえ、観るものを共感させる、素晴らしき女優。
(キョン・ミリ、イ・スンジェ、Personへ)